伊号第8潜水艦(伊8潜)


 巡洋潜水艦に旗艦機能を付加した「巡潜3型」の2番艦。敵艦隊の前面に展開し、艦隊決戦の前に敵主力艦を個別に撃沈する「漸減作戦」用の潜水艦として開発され、1938(昭和13)年12月に神戸川崎造船所で竣工した。 ドイツ製Uボートのコピーから脱却した純日本式の設計で、全長109.3メートル、水上排水量2231トン、水中排水量3583トン。国産のディーゼル機関2基を搭載、1万1200馬力の出力で水上23ノット、水中は8ノットの速力を発揮した。 写真は39(昭和14)年4月に撮影。巡潜3型は小型偵察機を搭載しており、後部甲板には射出用のカタパルトを装備している。
 伊8潜は太平洋開戦時、第3潜水戦隊の旗艦として真珠湾攻撃作戦にも参加。 43(昭和18)年6月、ドイツとの技術交流のため呉を出港し、アフリカ南端の喜望峰を経由して大西洋に抜け、8月にはドイツに占領されていたフランスのブレスト港に到着した。 レーダーや爆撃機用照準器、魚雷艇用エンジンなどドイツの最新軍用技術のサンプルを積み込み、ブレストを10月に出港し、12月に呉に帰港した。 太平洋戦争中、日本は5隻の訪独潜水艦を送り出したが、無事に帰還したのは伊8潜だけだった。 伊8潜はドイツから帰還後、通常任務に戻ったが45(昭和20)年3月、沖縄近海で米駆逐艦に発見され、激しい交戦の後に沈没した。
(1939年04月撮影) 【時事通信社】